2008年4月23日

船員保険は、なぜ労働者年金保険法より先に制定されたのか?

船員保険法は昭和15年、労働者年金保険法は昭和17年に施行されました。

労働者年金保険法は、陸上勤務労働者に対する年金保険制度、船員保険法は、海運労働者の年金、負傷・疾病等の総合的保険制度という違いがありますが、どちらも、戦争に向けた「国民の士気高揚のため」の制度です。

では、なぜ、労働者年金保険法に先駆け、船員保険法が先行して施行されたのでしょうか。その理由には、昭和初期の日本の施策が影響していると言われています。

当時の日本は、近隣諸国に軍事侵攻していたことから、民間船舶会社の貨物船を利用して物資を輸送していました。軍艦・戦艦は戦闘能力には優れていましたが、物資の輸送能力は劣っていたため、「物資輸送は民間の貨物船で」ということなのでしょう。

これは、それぞれの船舶の能力・役割りから考えれば自然な流れなのですが、問題は、対戦国から攻撃を受けた後の遺族の救済です。

海軍軍人が対戦国からの攻撃により死亡したときは、遺族に恩給が支払われたのですが、民間人が死亡した場合には、国から保障を受けることはできませんでした。

いくら「御国のために」とはいっても、これでは、国民の士気が高揚するはずもありません。このため、まず、軍事活動における重要な部分(海運輸送)に携わる者に対する保険(船員保険)が先行して施行されることとなったのです。

社会保障は、「国民の生活を守るためのもの」なのですが、設立の経緯から考えると、何だか複雑な気持ちになってしまいますね。

この記事へのコメント
なるほど
そんな歴史があったのですか・・
社労士の勉強中ですが、こういう話を聞くとなんだかもっと興味がわいてきます。
謝謝 2008-05-13 17:01:26
 
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